欧米では当たり前のシーティングが、「技術大国」日本で出遅れている理由の一つは、日本人が、椅子に坐りなれていないからです。「まさか」と思うかもしれませんが、欧米人と日本人の坐り方の違いを比較するとよくわかります。日本人は、バックレスト(背シート)を有効に使っていないのです。
もともと椅子のない暮らしをしていた日本人にとって、欧米から持ち込まれたバックレストは「くせもの」です。元気なときは、バックレストとの折り合いを何とかつけていますが、高齢になり、虚弱になると、バックレストはとても気難しくなります。
本書は、すべての人が、椅子とどう付き合うか、そして虚弱高齢者に、どう坐っていただくかを、「これでもか」というほど、絵、写真、文章を使って、わかりやすく説明しました。
シーティングの目的は、虚弱高齢者の笑顔と自立です。ちょっとしたコツをつかむことで、「永遠」の介護技術になります。
もともと椅子のない暮らしをしていた日本人にとって、欧米から持ち込まれたバックレストは「くせもの」です。元気なときは、バックレストとの折り合いを何とかつけていますが、高齢になり、虚弱になると、バックレストはとても気難しくなります。
本書は、すべての人が、椅子とどう付き合うか、そして虚弱高齢者に、どう坐っていただくかを、「これでもか」というほど、絵、写真、文章を使って、わかりやすく説明しました。
シーティングの目的は、虚弱高齢者の笑顔と自立です。ちょっとしたコツをつかむことで、「永遠」の介護技術になります。
定価1300円+税 B6判 モノクロ 250ページ
(目次の一番下に買い物カゴがあります)
CONTENTS
はじめに
第1章 なぜ長く坐ると疲れるのか?
- 立って歩くために進化した人体構造
ヒトは立って歩くことにした
歩くことは「力」だ
ヒトは長距離ランナー - 重心と支持基底面 6
ヒトの重心はおへその少し下の奥
支持基底面(base of support : BOS) - 二足歩行は省エネモード
不安定さこそが省エネ
コラム 二足歩行は四足歩行よりずっと省エネ - 重力との折り合い
背骨にはサスペンション機能がある
ヒトは歩くために進化した
脊柱のゆがみ
頭を支えるのはたいへん
仙骨は体幹の根 - 骨盤の傾きが脊柱のカーブを決める
体を支える骨盤
骨盤を前に傾ける
骨盤を後ろに傾ける(骨盤後傾)
骨盤の傾きをはかる - 人は坐るのが苦手? 19
床に座ると骨盤は後傾する 19
禅僧がいちばん立位に近い 20
立っているより歩く方が疲れない 22
長時間の坐りが動脈硬化へ 22
コラム 筋ジストロフィーに多い骨盤前傾 22
第2章 坐位と椅子の基本知識
- ヒトの坐位姿勢 26
どうしても立って歩きたかった 26
ヒトが犬のマネをすると体育坐りに 27 - 床坐と椅子坐 28
椅子はもともと坐りにくいもの 28
床の上で暮らす 29
椅子を使う生活 31
椅子には目的がある 32 - 目的に応じた椅子の角度や形状 35
バックレストを倒すとすべり台になる 35
コラム 危ないフルリクライニング 36 - 椅子の種類 37
ダ・ビンチの「最後の晩餐」はウソ 37
場面に合わせて椅子がある 38
ティルト、リクライニング 40
なぜティルトが必要か 42
第3章 シーティングの実際
- 寝たきりはなぜ問題か 48
長時間横になると起き上がれなくなる・ 48
高いADLは心を開く 49
シーティングはやめられない 51 - シーティングにおける3ステップ 52
まず坐り直しから試みる 52
チームをつくりましょう 53 - ステップで確実な成果をあげる 54
シーティングの時代 54
さあ、はじめましょう 54
ステップ1 臥位の評価(「姿勢屋」の役割が9割) 55
坐れない人の特徴 56
仰臥位になると見えてくる問題点 56
骨盤を基準面にする 57
床と体幹の隙間を探す 57
ハムストが短くなる 58
坐位姿勢をつくる 59
お尻が浮かないことを確認 59
股関節の屈曲制限 60
筋肉はすぐ短くなる 61
ステップ2 坐位の確認
(「姿勢屋」と「用具屋」は五分五分) 62
支えが必要かどうかを確認する 62
ステップ3 用具への適応
(「用具屋」の役割が9割) 64
用具で工夫 64
ケースタディ1
片マヒの男性~食事が自立した 67
ステップ1 臥位の評価 67
ステップ2 坐位の確認 68
ステップ3 用具への適応 68
ケーススタディ2
パーキンソン病の食事動作の改善 ・70
異常な姿勢も症状を悪化させる 70
ひじを支点にして食事する 71 - よくある困難事例 その原因と対応方法 73
A すべり坐り 73
筋肉は安心するとゆるむ 75
ひざはもっと開く 75
ハムストリングスを意識する 76
コラム ハムストが短縮するとひざが動かない 77
ひざから下の筋も短縮する 78
フットレストに足を休ませる 80
コラム 円背の坐りのポイント 82
重力に抗して自然に頭が持ち上げる 83
支点を新しくつくる 84
B 横倒れ(側弯) 87
脳を安心させる 87
C 前倒れ(きつい円背があり、
常に頭を下げている状態) 89
背ベルトの調整だけで改善することも 89 - 3つのチェックポイント 94
①座面の前端が、ひざの後ろに直接触れていないこと 95
②座面の高さが低すぎず高すぎず 95
③バックレスト上端部に軽く指が入る 97
コラム 車椅子は、メガネと同じ 98 - 車椅子・椅子の諸注意 100
足回りを工夫する 100
モジュール型車椅子でも
3ステップが必要 101
背張りベルトの調整方法 102
バックレストの角度調整 103
バックレストの高さ 105
ヘッドレストに注意・ 105
第4章シーティングで改善する疾患
- 呼吸と嚥下の基礎知識 108
神経の働き 108
自律神経を整える介護 110
風が吹けば桶屋がもうかる 111
なぜ誤嚥するのか 114
呼吸に努力が必要な状態 115
嚥下のメカニズム 118
円背はのどを狭くする 120 - 褥瘡の基礎知識 122
ガラパゴス車椅子 122
シーティングで褥瘡完治 124
座圧だけが褥瘡の原因ではない 125
褥瘡は「坐って治す」 129
コラム 「ずっこけ坐り」は
ずっこけているわけでない 131
コラム 褥瘡の多発地帯 132
お尻の骨の周囲には褥瘡ができにくい 132 - 排泄の基礎知識 135
重力にさからわない排便を 135
下剤は「麻薬」 137
腹筋を解放してあげる 139 - 筋肉の基礎知識 141
筋肉隆々は観賞用 141
ぽよんぽよんの力士は一瞬で力を発揮する 143
坐っていても寝たきりと変わらない 144
すべり坐りが寝たきりをうながす 146 - 認知症ケアとシーティング 148
危険を知らない介護現場 148
体幹が左に傾き左に注意が向く 150
一人でおせんべいを食べる 151
不良姿勢による不安、緊張 154
介護力アップは地域全体で 154 - シーティング臨床マトリクスの使い方 156
状態像チェックリスト 156
姿勢は全身に関わる 156
「終末期」を極力短くする 158
介護保険分類をあてはめる 158
一つのうったえからわかること 159
一つの症状が次の症状を呼び込む 160
褥瘡リスクを低下させる 161
シーティングの目的は自立度アップ 161
症状の連鎖に気をつける 162
シーティングは病気治療の基礎 163 - シーティングは脳に働きかける
恐怖に対する身体の反応は反対 164
「地面がない」という恐怖 165
坐りは脳の安心によって安定する 167
姿勢の変化で気持ちに変化が 169
人は心で坐る 170 - 良い姿勢の基準 172
悪い姿勢とは? 172
人の心を尊重する坐位 173 - シーティングで作業療法が効率化する理由 175
重力と筋力 175
シーティングによって
趣味がそのままリハビリに 177
手が挙がらないのは骨盤支持がないため 179
第5章 シーティングにおける
- 用具の選び方や活用方法など 184
「現場」の問題とその解決方法
超高齢社会の車椅子はメガネと同じ 184
車椅子事情は混乱している 185
クッションの種類 188 - 身体拘束と姿勢保持
(シーティング計画書の活用) 190
身体拘束と姿勢保持はコインの裏表 190
回復期リハの車椅子使用のポイント 194
「坐り」の目的を意識する 195
「漫然坐り」は二次障害の原因 196
「坐らせきり」は高齢者虐待につながる 197 - 新しい車椅子の開発 198
ソファの使い方は難しい 198
いろいろな生活シーンを一台の車椅子で 200
コロンブスの卵 202
おわりに
シーティング臨床マトリクス