2017年4月25日発売
執筆
櫻井和代
介護保険は「構造悪」。巨大化、怪物化し、生活を脅かす介護保険制度――。本書は、現場で、介護保険の成立過程をつぶさに見、経験し、その矛盾を肌で感じてきたベテラン介護職の詳細な記録です。すべての日本人が、介護保険制度を知り、その矛盾をとらえなおし、取り繕いの「改定」ではなく「出直し」を考えるときです。
介護保険はさまざまな矛盾をはらみながら、改定ごとに矛盾を広げています。その矛盾点を多くの国民は気付いていません。消費税2%アップよりも大きく家計に響く保険料を、(強制的に)支払っています。しかし、いざ利用するときは、2割負担(将来的に3割負担)の利用料が年金家計を直撃し、十分な利用が難しくなります。そもそもヘルパーの待遇が悪く、ヘルパー数は頭打ちです。このままでは介護保険が国の社会保障(セーフティネット)をつぶしてしまいます。
介護保険はさまざまな矛盾をはらみながら、改定ごとに矛盾を広げています。その矛盾点を多くの国民は気付いていません。消費税2%アップよりも大きく家計に響く保険料を、(強制的に)支払っています。しかし、いざ利用するときは、2割負担(将来的に3割負担)の利用料が年金家計を直撃し、十分な利用が難しくなります。そもそもヘルパーの待遇が悪く、ヘルパー数は頭打ちです。このままでは介護保険が国の社会保障(セーフティネット)をつぶしてしまいます。
定価 1300円+税 A5判 総224ページ モノクロ
CONTENTS
はじめに
介護保険法という迷宮
第一章 福祉・措置時代のホームヘルパー
ホームヘルパーになった 他区のホームヘルパーと出会う 30分黙って相手の話を聴くのだよ ヘルパーであることが楽しかった ヘルパーって何をする人なの 介護とは人の幸せにかかわるもの─ 制度の変遷 ゴールドプランの登場 介護福祉士の誕生 国家資格というけれど、処遇はおきざり 在宅介護と市場主義の台頭 規制緩和と民間参入の拡大へ 介護保険法の布石、新ゴールドプラン さまざまな高齢者政策のなかで 言葉の裏に隠された矛盾 個人の費用負担は措置時代より高い
第二章 介護保険法の成立前夜~不安な足音
急ピッチで進む介護保険への動き 保障がない非常勤ヘルパー 「民間活用」ですべてよくなる? 「介護の社会化」「利用者本位」 矛盾だらけのキャンペーン 現金給付と現物給付 介護保険法成立、まずやってみる 報酬が「人単位」から「サービス単位」に 自治体は現業から撤退していく 「ケースマネジメント」から「ケアマネジメント」に ケアマネジメントは効率優先 新しい言葉ICF(国際生活機能分類) ケアマネジャーの誕生 介護保険の欠陥は指摘されていた 見切り発車 「公務常勤労働」から「民間非常勤労働」に 20年後の姿を米国にみる 〇コラム 教育は「福祉」概念のまま 一番ケ瀬先生の提言・問題提起
第三章 介護保険法の17年
消えた「介護の社会化」 介護行為が細分化される
- ●素顔を見せた介護保険(第一期)2000~2002年
「介護の社会化」で始まったはずだったが ヘルパーの悲鳴 方向が違う! 市区町村も困惑 〇コラム 寝たきりにならなければ使えないの? 切り離されていくヘルパー 「不適正事例」の通達 法の問題なのか、事業者の問題なのか ヘルパーは「お人よし」 3年目の見直しに着手 ヘルパーのメンタルヘルスの危機 ヘルパーは労働者・・・なのに ヘルパーのやさしさが利用される 複合型の報酬単位の廃止 家事援助は「些末」な労働 報告書作成は仕事に入らない 3割負担となったら社会保障とはいえない 介護にグローバル化の波も 「自立支援」は嫌われる ヘルパーの専門性とは?
- ●介護給付適正化と軽度者外し(第二期)2003~2005年
「新予防給付」の法制化 介護の本質を現場感覚で探る 介護報酬アップ、賃金はそのまま 国の言い分 予防給付・介護給付の二階建て 家事援助は廃用症候群を引き起こす? 〇コラム 「聖域なき構造改革」と介護保険 事業所の指定取り消し 医行為解禁、資格問題で揺れるヘルパー 意欲への働きかけを数値化? いつの間にか制度がある 「8・27通知」が出されるが・・・ 石川事件の衝撃 各地の現場を訪ね歩く 介護保険のターニングポイント かみ合わない議論 耳に快い言葉だが 法改正に戸惑う自治体 法は身体に合わない服
- ●新予防給付始まる(第三期)2006~2008年
療養病床の再編の動きの中で 「介護予防」って何? 「一緒に行う」が独り歩き 介護保険は書類の山 「介護給付適正化」で混乱 考えることを奪われた介護職 問題はサービスの谷間で起こる 新施策に市場は敏感 〇コラム 適正化プログラムが介護の足を引っ張る 意欲をそがれる介護職 事務量に追いつかない現場 コムスン事件 〇コラム 役所言葉 病院から在宅へ 〇コラム 映画「シッコ」が人ごとではない 社会保障も自己責任で 介護報酬に一喜一憂の業界 ふんばる介護職、離れる介護職2
- ●進む利用者負担増(第四期)2009~2011年
矛盾だらけのまま定着 介護職の処遇改善交付金 法が「空気」になってきた 法改定は、既定路線によって 在宅死への誘導 病院からの患者追い出し4 「メルトダウンは起こっていません!」 「共助」の言葉で進められる制度改革 〇コラム 私の故郷 介護保険法への異議 家事45分 国のエビデンスはこんなものなの? マスコミも理解していない 法に沿って、ケアプラン変更したら・・・
- ●プログラムに沿って法は成立していく(第五期)2012~2014年
筋書き通りに成立する法 〇コラム 介護の世界は何か変? 10年後?いえ、明日が不安! 国民が法を知ったときはもう遅い 絵に描いた餅の社会保障 シルバー産業に期待できるか ケアマネは介護保険に慣れてきた 人材不足は変わらない
- ●自己負担増は限りなく(第六期)2015~2017年
待ったなしの利用者負担増 荒廃する現場 介護保険って何だったの? 第四章 未来に向けて 失われた20年のなかの介護保険 社会保障縮小の最前線 〇コラム あるサービス担当者会議 75歳から老人? 介護をつぶした介護保険 勇気ある小さな一歩