第18回: アルバムを活用した自分史づくり
第18回 |
アルバムを活用した自分史づくり
古いアルバムがどこかでホコリをかぶっていませんか。人間の記憶も、脳の片隅でホコリをかぶったまま眠っています。半世紀ほど前、米国の精神科医によって「回想法」が提唱されます。昔を回想することで脳の前頭前野が刺激され、認知症に改善効果があることが認められています。
末期がんの人にも、アルバム整理は、「自分はこうやって生きてきたんだ」ということを再確認することで、気持ちが落ち着き、心を取り戻す手段として有効といわれます。欧米にはアルバム整理を手伝うボランティアがいて、ときには思い出の人をインタビューに出かけることもあるそうです。
アルバム整理が、前頭葉を刺激し、自信を深めるものなら、末期がんや認知症の人だけではなく、元気な人にも有効のはずです。
古いアルバムを引っ張りだし、写真を整理しながら新しいアルバムに貼り直し、記憶の底をさらいながら解説や感想をつけます。写真だけではなく、おりおりのチケット、パンフ、ポストカードなども貼り付け、「過去の自分探し」をします。イラストを描いたり、雑誌の写真を切り貼りして創作的要素を加えても楽しいものになります。過去の自分と向き合うことは、自分とは何者かを問う時でもあり、先祖や子孫との対話の時になるかもしれません。
認知症がある場合は、家族が、「この写真は誰?」「何のお祝いごと?」などとインタビューしながら手伝います。なるべく詳しく思い出してもらいます。ちょっと記憶にぶれがあってもかまいません。子どもや孫が手伝えば自分のルーツが明らかになり、さまざまな歴史がひもとかれ面白い作業になります。世代間で話題が豊富になり、豊かな時間を共有できます。
アルバム整理は自分史の製作でもあり、作品でもありますが、プロセスにこそ意味があります。自分史は残っても、ほんとうの自分の心は後世には残りません。自分史は、人生の1ページに挟む押し花のようなものです。でも愛すべき押し花です。