第6回: 雨はうれしい、フラで喜びと感謝を伝える
第6回 |
雨はうれしい、フラで喜びと感謝を伝える
ハワイといえばフラダンスをイメージする人が多いと思います。最近では、フラを踊る人口が増え、全国にフラダンスのグループができています。女性ばかりではなく、男性ダンサーも少しずつ増えています。
ゆっくりで優美な動作、わかりやすいステップ、親しみのある軽快なメロディーなど、年齢に関係なく楽しめるダンスです。もちろん有酸素運動ですから健康にもいいし、集団で調和的に踊ることから、いわゆる「社会脳」を養い、良質な脳刺激を期待できます。高齢の人の趣味、運動として「買い」です。
「ハーラウ・ケオラクーラナキラ」(ハワイ語で「栄光の宿る教室」)という、舌を二三回噛んでも、最後までいいきれないフラ教室を主宰する田中新さんは、「フラを踊ることで、日本人の心を、自然に思い起こしていくんじゃないでしょうか」といいます。ハワイ大学で文化人類学を学んだ田中さんは、ハワイ人と日本人は感性的に似ていると考えます。
日本人のような気配りをハワイ人にも感じるそうですが、もともと日本人がもっている自然との深い交わりの文化がハワイにもあるそうです。森羅万象に「八百万(やおよろず)」の神が潜むと考え、フラでその自然神と交流します。
もともとフラは、神様に捧げ、祈るもので、それぞれにテーマがあります。雨が降ってうれしい、電気が通って嬉しいと、神様に喜びと感謝を伝えます。
自然神は、日常生活どこにでも身近にいて、雨や風にはその土地の名前があるそうです。たとえば、キープウプウという雨は、ある土地にしか降らない恵みの雨です。別の土地には別の神様が雨を降らせます。
「あいにくの雨、という言葉がないんです。雨はとつぜん降って、びしょ濡れになっても恵みなんです」と田中さんはいいます。ハワイでも雨はよく降ります。ときには床上浸水ということもありますが、雨は恵みです。ハワイが「地上の楽園」といわれるのは、その気候風土のことというより、この考え方にあるのかもしれません。